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ビジネスエリートが身につけたい。9割の日本人が知らない社交のルール

教養としてのダンディズム

本記事は、御手洗昭治氏の著書『ビジネスエリートが身につけたい 教養としてのダンディズム』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

9割の日本人が知らない社交のルール

年1,500万円の家賃収入を得る元会社員が実践した不動産投資で後悔しない「8つのルール」とは?
(画像=mary416/stock.adobe.com)

紹介・交際の掟

外国の首脳などをもてなすエリゼ宮での食事会は、美食大国フランスの重要な外交の武器である。なぜであろうか? おいしい食事は、人の心を解かし、合意を円滑にするからである。

シャンデリアの輝きの中でフランスが誇る料理とワインで数時間ほぐせば、どんなに強面の相手も自分の土俵にたぐり寄せられるという。ちなみにフランスの「食卓外交」は、19世紀に、外相タレーランが、国際会議をフランスにとって有利に導くため、ブルボン王朝ゆかりの宮廷料理を振る舞ったのが始まりとされている。そのため、タレーランは「巧みで有能なネゴシエーター」と称されている。

食事会も最初は紹介からスタートするものである。紹介の後、食事と交際へと移る。しかし、紹介の際の流儀にも大人の「暗黙のルール」がある。

欧米文化などでは、「下位者を上位者に紹介する」のが掟である。たとえ流暢な英語が話せても、この暗黙のルールを知らない日本人が意外と多い。

また、「女性を男性に」、「年少者を年長者に」、「位の低い人を位の高い人に」紹介するという原則がある。さらに、誰かから紹介されたら、立ち上がって姿勢を正し握手する。これに関して二つの掟がある。

(1)女性に紹介される時には、女性が手を差し出すまで握手はしないで待つこと
(2)相手の名前を聞きそこなわないこと

欧米社会では日本のように、ひんぱんに名刺の交換をしない。

そのため、互いに相手の名前を覚えるのが社交術のマナーである。このマナーを身につけるためには予習も必要だ。

日本の人びとは、宴会やパーティの際でも、旧知の人びとだけとで歓談しがちだ。未知の人びととの歓談は少ない。

それとは反対に、欧米の文化では未知の人を紹介したり、紹介されたりすることが多く、そこには見えないルールがある。

その際、双方の上下を考えたり、肩書を考慮し引き合わせるのは、修練が必要だ。それに加え、双方の得意分野のこと、趣味などについて気のきいたコメントを加えたりしながら紹介するパフォーマンスの訓練も必要だ。。

仕草や振る舞いのメッセージの解読は、文化によって解釈の仕方が異なるので注意が必要だ。また、仕草、振る舞い、作法などは身体の動きによって表現される非言語「サイレント・ランゲージ」である。身体表現の仕方や伝達方法も文化によって異なり、しかも、通常の意識の下で「無意識」にやりとりされている。

人間の動作や振る舞いの中には、一見、なんの意味もないようでいながら、実は本心や潜在意識の表れというものがある。

例えば、欧米文化では、出会いにはいくつかのステップがある。

最初に視線を合わせた直後、二人は5分の1秒ほどの間に左右の眉をぴくりと上下させる。これを「アイブロウ・フラッシュ」という流儀である。この仕草は、欧米以外のサモアやバリ島や南アメリカのインディオの間でも見ることができる。

「アイブロウ・フラッシュ」を意図的に使わないのは、日本人だけである。むろん、その仕草は、日本人も試みればできる。しかし、日本文化では、その動作は下品で無作法な仕草と見なす。

ビジネスの世界においては、相手に対する最初のアプローチは電話でなく、やはりフェース・トゥー・フェースであるべきだ。互いに目と目のコミュニケーション・メッセージを通して、情感的なつながりをつくり、商談をまとめるというわけだ。

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(画像=『ビジネスエリートが身につけたい 教養としてのダンディズム』より)

パーティの流儀

「パーティー(party)」とは、二人以上の人びとが集まり会食や飲食をしたり、歓談したりする「集い」のことである。

語源はラテン語パルティータ(partīta)で「分けられたもの」という意味であった。そこから「部分(part)、特定の思想信条や目的のために(他と分かれて)集まる集団」などを表すようになった。それがノルマン征服を介して古代フランス語のパルティエ(partie)を経て、現代英語のpartyに定着した。その意味は数人から大勢で和気藹々と集まる「会合」、社交的な「集い」のことである。

17世紀になってパーティが客間の「サロン」で開かれるようになる。当時からのパーティでのエチケットは、

(1)他人の席を占めてはならない
(2)火に向かって座ってはならない
(3)主客の前に出ない
(4)あくびや居眠りをしない
(5)席を立ち去る時には、挨拶をせず、自分の都合の良い時にひそかに退出する

などであり、今でもこの流儀は受け継がれている。

パーティの種類であるが、それはティー・パーティにはじまり、カクテル・パーティ、ダンス・パーティ、バースディ・パーティ、ホームパーティにいたるまである。別な意味としては、~党、相手方という意味も含まれる。

まずは、社交パーティの際の交際の流儀について触れてみたい。

パーティの御馳走は対人コミュニケーションと会話

パーティに参加するということは、友達や仲間らと共にいることを享受したいという欲求であり、他の人びとと接触し、それらの人との友情・つき合いを保っていこうとするコミュニケ―ション行動である。例えば、社交パーティ、来客のもてなし、祭りなどのイベント、異性との交際や結婚、一家での団らんや親類とのつき合いなどは、すべて心理学でいう社交欲求によるものである。

しかし、日本で社交といえば、明治時代に鹿鳴館で繰り広げられた上流階層の華やかな交際の場がイメージとして浮かび上がる。

欧米などでは、式典などフォーマルなレセプションや祝賀パーティはホテルで行うが、それ以外は家族で行うホーム・パーティが多い。アメリカの子供のいる家庭で人気なのは、裏庭の芝生の上などで行うバーベキュー・パーティである。暗黙のルールとしては、ある家庭のホーム・パーティに招かれたら必ず招き返すことが掟となっている。また、パーティの「ごちそう」は対人コミュニケーションを通して知り合いになり、「会話」を楽しむことにある。

誕生日はむろん、記念日、引っ越し、送別会など10種類ぐらいのパーティを家庭で行う。これらとは別に、ビジネス上のホームパーティもある。

日本のホーム・パーティと異なるのは、欧米文化では夫婦単位で招待したりする点だ。しかも、仕事上の関係者や会社の上司なども招待したりする。アメリカなどでは、「夫の出世は妻で決まる」という喩えがある。したがって、おもてなしや招き方の流儀は、その人の人生やビジネスにも微妙に影響する。そのため、ホスト役の奥さんは何かとパーティのスタイルや料理のメニューや話題にも気を使う。

日本では、会社関係、ビジネス関係などでもお客さんを外食でもてなすが、欧米文化では家庭に招きディナ―を共に楽しむことが圧倒的に多い。

パーティの種類

〘インフォーマルなホーム・パーティ〙

⬥コーヒー(ティー)モーニング・パーティ(10:00a.m.~12:00p.m.)

コーヒーなどを飲みながら、またクッキーやデニッシュやドーナッツなどを食べながら団らんの一時を過ごす。

⬥ランチ・パーティ(12:00am~3:00pm)

立食型のビュッフェ・スタイルとテーブル・スタイルがある。ランチの前に、ワインなどが提供される場合もある。

⬥アフタヌーン・パーティ(3:00am~6:00pm)

紅茶好きのイギリス人が好み、サンドイッチやケーキ、スコーンやクッキーなど軽いスナックがティーと共に用意される。

⬥ディナー・パーティ(7:00pm頃スタート)

立食型のビュッフェ・スタイルとテーブル・スタイルがある。

⬥アフター・ディナー・パーティ(8:00pm以降)

ディナーの後にワインやウイスキー、ブランデーなどをエンジョイしながらくつろいだ雰囲気の中で会話を楽しむ。

〘フォーマルなホーム・パーティ〙

⬥ブレックファスト・ミーティング(7:00am以降)

ホワイトハウスなどでも、事前会議も含めよく行われる。服装もフォーマルなスーツが求められる場合が多いので、夏の場合もネクタイ着用なのかクール・ビズでもOKなのかを事前に確認しておくこと。

⬥ランチョン・パーティ(12:00pm以降)

欧米では、ビジネスと親睦を兼ね、夜の接待より、昼の午餐会的なパワーランチなどで商談を行う。

⬥カクテル・パーティ(5:00pm~7:00pm)

文字どおりカクテルやワイン、ビール、ウイスキー、シャンペンなどの飲み物とオードブルやメインの食材を楽しむ。

お酒は個人個人が楽しんで飲むものであり、酔っぱらうためのものではない。欧米文化では、お酒は相手に強制してはならないという流儀がある。街頭で酔っぱらっていると逮捕されるので注意を要する。

⬥ディナー・パーティ(6:00pm以降)

ホテルやその他の式典会場で開かれる。ビジネス関係者は親睦のみならず新たなビジネスなどに結びつく場合も多いので、出席は不可欠である。未知の関係者との交流と社交の輪が広がり将来の商談にも発展する場合もある。

パーティの服装

ここでは、パーティの際の服装にしぼって触れてみたい。

フォーマルなパーティが開催される場合、招待状が届くはずだ。招待状によっては黒の「ブラックタイでお越し下さい」か「平装でお越し下さい」と明記される。また、一流のフォーマルな式典型のディナー・パーティには、タキシードで出かける場合もある。

「平装」の場合も、派手な目立つ色彩のスーツや、ポケッ・トチーフ、金ピカのネクタイやタイピンは品がないと思われるので避けることである。服装はTPOに応じたものを着ること。一般的な服装は、やはり「ダーク・スーツ」、「ブラック・スーツ」それに「ディレクターズ・スーツ」などである。

⬥ダーク・スーツ

端的に言えば、ダーク・スーツは一般的にシックで無難な色なので人気があり、対外的なビジネス・スーツとして、また、立食のビュッフェ型パーティのみならずフォーマルなパーティ用スーツとしても活用できるので人気がある。

⬥ブラック・スーツ

ブラック・スーツは、シーズンを通してフォーマルなパーティやカクテル・パーティなどでも着用できる。ネクタイはシルバー系がマッチするので、よく使用される。

⬥ディレクターズ・スーツ

ディレクターズ・スーツの特徴は、上着は黒のダブルブレストかシングルであるが、ズボンは黒かネズミの縦ジマである。ネクタイの色は「ブラック・スーツ」と同様にシルバーが一般的である。

⬥タキシード

招待側からの依頼がない限り、着用する必要がない。上着の色は黒か濃紺のシングルがある。ズボンは共布で、側面の縫い目に飾縁がついている。ネクタイの代わりに黒の蝶結びタイとなる。

ビジネスエリートが身につけたい 教養としてのダンディズム
御手洗昭治(みたらい・しょうじ)
兵庫県生まれ。札幌大学英語学科・米国ポートランド州立大学卒業。オレゴン州立大学院博士課程修了(Ph.D.)。ハーバード大学・文部省研究プロジェクト客員研究員(1992~1993年)。ハーバード・ロースクールにて交渉学上級講座&ミディエーション講座修了。エドウィン・O・ライシャワー博士(元駐日米国大使・ハーバード大学名誉教授)が、ハル夫人と来道の際、講演の公式通訳として各地を随行(1989年9月)。日本交渉学会元会長、札幌大学名誉教授、北海道日米協会副会長・専務理事兼任。主な著書・編著に『サムライ異文化交渉史』(ゆまに書房)、『ハーバード流交渉術 世界基準の考え方・伝え方』(総合法令出版)、『ケネディの言葉 名言に学ぶ指導者の条件』(東洋経済新報社)などがある。

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